2015.07.06 Mon

ダイレクト出版

品質低下サイクル

To: ダイレクト出版のみんなへ

From: 小川忠洋


ちょっと前の話です。

新しいキャンペーンのための新FE商品ができました。

そのランディングページをレビューして欲しいというので、

見てみると、「こりゃダメだ」と思うような点があったので

その点を指摘しました。


何を指摘したかというと、

新FE商品のカバーのデザインでした。


カバーのデザインはLPの中で、いや

キャンペーンの中で最も重要なポイントの一つです。

なぜか?理由は簡単です。人は本を「カバー」で買うからです。

中身よりもカバーのデザインによって、

品質を感じるものです。


大阪オフィスには1Fに紀伊國屋がありますから、

そこをぶらぶらすればスグに分かります。

本を買う時、一番最初に見るのがカバー。

そしてペラペラと目次を流して、きになったら購入。

これが9割方の人のパターンでしょう。


で、カバーのデザインが良くなかったので、

やり直しをした方がいいという事を伝えたんですが、

翌週、その商品がリリースされていて驚きました(◎_◎;)


担当者はスケジュールが差し迫っていたため

多少品質が良くないと分かっていても、

スケジュール優先でリリースしてしまいました・・・


その後、当人には直接、

きちんと修正するように指示はしたんですが、、、


これ、このまま放っておいたらどうなるでしょうか?

もちろん、カバーが良くないって指摘はしてますから、

「一旦、リリースして後から修正しよう」

と考えたのは間違いありません。


が、ポイントはこの"後から修正"が本当に

実行されるのか?という話です。。。ぼくの経験上、

いまやらなかったら、後からやる事はありません。

なぜなら、スケジュールが迫っているのは、

「いま」に限ったことではなく「後から」でも

同じようにスケジュールは迫っているからです。


なので、むしろ、今後は、

「既に動いているものがある」「反応が取れてるので問題ない」

と思って、おそらくこのカバーの修正を

後回し後回しにして、1年経っても実行されない・・・

と言う事がよゆーーで起きるでしょう。


ってか、細かくね?

反応取れてるならいいでしょ?


と思うかもしれません。そこで、

あるオモシロい話を紹介したいと思います。


ある有名なキャンディーを販売している製菓会社の

CEOになった人の話です。


そのキャンディは34種類のフレーバーが使われていました。

CEOはコスト削減をしようとして、


「34種類ものフレーバーを消費者は

 本当に分かっているんだろうか?」


と試しに、1つのフレーバーを削減して33種類で作ってみました。

結果はどうなったか?売上に何の影響もありませんでした。

そして、削減した1種類分のコストが「そのまま」利益に上乗せされました。


これに気を良くしたCEOは、

もう1種類削減しました・・・


32種類。また何の変化もありません。

実際、CEO自身がそのキャンディーの味を比べてみても

全く分からなかったのです。消費者に違いが

分かるわけがありません。


また削減したフレーバー1種分の

コストが利益にそのまま上乗せされました。


もちろん、CEOは削減をくり返し、

1種類、また1種類と少しずつ、変化させていきました。

売上には全く影響はなく利益はうなぎ登りでした・・・


ところが、、、


ところがある日、売上がガクンと落ちる時がありました。

CEOは不思議に思いました。なぜなら、毎回、味覚テストをしていて

味にほとんど変化がない・・・という事を確認してから

フレーバーを削減していたからです。


「なぜだろう?」


売上の急激な減速にCEOは焦りました。

どんどん、どんどん消費者がこの有名なキャンディーから

離れて行っているのが、あらゆる数字で分かりました・・・


以前のものと比べて、

味もほとんど変わっていない。

実際、味覚テストで味の違いが分かった

消費者はいなかったにも関わらず、、、


キャンディーの売上はどんどん下がっていきました・・・


そしてある人がCEOに忠告ました。


「最初のバージョンと比べてみたらどうでしょうか?」


34種類のフレーバーが入った最初のバージョンと

現在のバージョン(たった9種類しかフレーバーがない)を

比べてみると・・・


「なんだこれは・・・・・・?」


するとどうでしょう。消費者に愛されて、

とても有名だった最初のキャンディーとは

全く違う味になってしまっていたのです。


10種類と9種類のフレーバーの「味の差」を

比べても全く分からなかったけど、


34種類と9種類の「味の差」は

明確でした。そして消費者が愛したのは、

34種類の古き良きキャンディーでした。。。


さて、ここから何が学べるでしょうか?


品質の低下とは、ちょっとずつなら誰も分かりません。

ところが、顧客に分からないからいいや、と、

そのちょっとをくり返していると、ある日、突然、

ボーダーラインを越してしまうのです。



品質低下サイクル07062015.jpg

























そのボーダーラインとは、顧客の認知のラインです。


ある日突然、顧客は気がつくわけです。

「マズくなったな」「品質が低くなったな」

など。など。


つまり、「少しくらいだからいいだろう」と思って

品質低下を容認すると、それは着実に下り坂を下って、

ボーダーを超してしまうということです。


スタバもコーヒーの品質を落としても

顧客は誰も分からないでしょう。でも売り手は分かるのです。

そしてその習慣がつくのです。それを容認する文化ができるのです


キャンディ会社がキャンディの味が命のように

ウチの強みはマーケティングです。


なので他のジャンルでは、コストカットや多少の品質低下も

容認できるかもしれませんが、ことマーケティングにおいては、

ちょっとした品質低下は命取りになります。


もちろんスケジュールが差し迫っているので、

高い品質とスピード感を同時に満たすのは

難しいでしょう。


しかし、それがプロの仕事です。


どっちかだけでいいんだったら、

誰だってできます。矛盾した二つの

要求を満たすからこそプロの仕事だと思いませんか?


みなさんの仕事だけでなく、

ぼくの仕事でも矛盾だらけです。岩田さんがよく

「経営とは長期と短期の矛盾に折り合いをつけること」

だと言うような事を言っていました。


長期的利益と短期的利益は常に矛盾します。

矛盾はしてても、その両方を満たすのがマネジメントの仕事だと。

(マネージャーの方にはよく分かるでしょう。これ(^^ゞ)

売上利益追求と社会貢献も相反することが多いです。

しかし、両方追求しなければいけません。


なので、

「こっちをやったらあっちができないよー」

なんてのは素人の泣き言だということです。


スピードと品質

両方満たすのがわれわれプロの仕事です